「パンデミック・ヒステリー」を回避する! 陰謀論追っかけの効用とは?
陰謀論の種は尽きない
■グローバリズムはパンデミックを不可避に生む
ところで、20世紀に入ってから突発的に流行しパンデミックになる感染症が増えたのはなぜか。「スペイン風邪」と呼ばれるインフルエンザが1918年から20年の間に猛威をふるい世界で5000万人の死者を出した。1980年代にはエイズがあった。21世紀になってからは、エボラ出血熱だのデング熱だのSARSだの。そして今は、新型コロナウイルスだ。人体に影響はないとはいえ、鳥インフルエンザに豚熱(旧豚コレラ)の日本における流行もあった。
20世紀に入ってから、特に21世紀に入ってから突発的に流行する感染症が増えた理由ははっきりしている。グロ―バリズムだ。
感染症は、人の交流がなければ広がらない。ひとつの大陸や島の中で感染拡大しても、海に隔てられれば、それ以上は伝染しない。交易を求めて、植民地を求めて、新天地を求めて、人が移動すると感染症も移動して、パンデミックとなる
アメリカ南北の先住民族が滅ぼされたのは、ヨーロッパ人がもたらした天然痘のせいで弱体化されていたからだ。15世紀末にヨーロッパに梅毒が突発的に出現し流行したのは、アメリカ大陸に渡った探検隊員がヨーロッパに持ち込んだという説がある。ベーリング海峡を渡りシベリア経由でヨーロッパに入ったという説もある。
石弘之は『感染症の世界史』(洋泉社、2014・角川ソフィア文庫、2018)において、中国は昔から感染症の発生地域であり、将来もまたそうなる可能性が高いことを指摘した。
なぜならば、世界史上3回発生したペストの世界的流行が遺伝子分析から中国が起源であると判明しているからである。シルクロードの交易商人からヨーロッパにもたらされたのである(https://www.afpbb.com/articles/-/2772233)
スペイン風邪がパンデミックになったのは、第一次世界大戦中に軍の海外派遣という人の移動があったからであった。米軍と英軍が、軍属労働者として、約96,000人の中国人を募集雇用し、その当時に中国で流行していたインフルエンザが、まず米軍に広まったという説もある。(https://www.nationalgeographic.com/news/2014/1/140123-spanish-flu-1918-china-origins-pandemic-science-health/)
中国の「感染症の巣窟」性は、現代において一層に高まっている。13億4000万人の人口を抱え、その経済活動は世界を股にかけている。ツーリズムが盛んである。春節には3億人が国内旅行し、1億人が海外に出る。
しかし、防疫体制は遅れているし、トイレの不潔さに見られるように公衆道徳の水準はまだ低い。慢性的な大気汚染や水質汚染があるので、呼吸器が損傷し、病原体が体内に侵入しやすい。
つまり、中国は感染症が拡大する条件がそろい過ぎている。したがって、陰謀論など持ち出さなくても、武漢に新型コロナウイルス感染が始まり、世界に拡大したのは不思議ではない。中国は、昔も今もローカルな感染症をパンデミックにしやすい地域なのだ。